勤務校では第一学習社の漢文の教科書を使っていますが、その中で『戦国策』の「戦勝於朝廷」の読みについて、難しいと思われる点がいくつか見られます。今回は、「令初下」の読み方について書きます。

教科書では、以下のように句読しています。

令初下。群臣進諌、門庭若市。

群臣初めて下る。群臣進み諌めて、門庭市のごとし。

「令初下」で一文としています。このような句読をする限り、「命令が初めて下った。群臣たちは〜」という不自然な訳にならざるをえません。

実際は以下のように、「令初下〜門庭若市」までで一文であると考えるべきでしょう。

令初下、群臣進諌、門庭若市。

群臣初めて下り、群臣進み諌めて、門庭市のごとし。

「初」はもちろん時間を表す副詞ですが、ここでは「群臣進諌、門庭若市」に対する条件・時間を示す従属節を形成しています。「命令が下った当初、群臣たちは〜」「命令が初めて下った、群臣たちは〜」のように訳すのが自然でしょう。同じく時間副詞「既」が従属節をつくり、「〜し終えると、」「〜してから、」と訳すのとよく似ていますね。

更に言えば、この後の句読にも疑義があります。教科書は、以下のようにしています。

数月之後、時時而間進、期年之後、雖欲言、無可進者。

数月の後、時時にして間に進み、期年の後、言はんと欲すと雖も、進むべき者無し。

「門庭若市」で文を切るのであれば、「時時而間進」でも文を切るべきでしょう。以下のようになります。

令初下、群臣進諌、門庭若市。数月之後、時時而間進。期年之後、雖欲言、無可進者。

群臣初めて下り群臣進み諌めて、門庭市のごとし。数月の後、時時にして間に進む。期年の後、言はんと欲すと雖も、進むべき者無し。

このように句読することにより、①命令が下った当初(令初下)、②数ヶ月後(数月之後)、③一年後(期年之後)という三つの時間が並列されていることがよくわかるようになります。